中国販路拡大コンサルタントの太田早紀です。
当ブログでは中国の会計・税務・労務に関する規定や実務について解説しております。
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【個人所得税】「労務報酬」の税金について⑤
上海市税務局の微信公式アカウントで「労務報酬」の税金について解説がありました。全7点の解説がありましたので、今回は5点目の労務報酬収入額の認定について紹介いたします。
目次:
① 労務報酬の概念
② 労務報酬と給与賃金の関係
③ 労務報酬と経営所得の区別
④ 個人が取得する異なる項目の労務報酬の納税試算方法
⑤ 労務報酬収入額の認定
⑥ 非居住者個人が取得する労務報酬所得の計算方法
⑦ 計算方法の紹介
⑤労務報酬収入額の認定
中国居住者の個人へ労務報酬を支払う場合、或いは個人に原稿の執筆を依頼した際の原稿執筆料を支払う場合或いは特許権の使用料を支払う場合、企業などの源泉徴収義務者は、スポット単位或いは月次単位で個人所得税を源泉徴収し、申告納付します。
中国居住者の個人にとって、源泉徴収義務者が行うスポット単位或いは月次単位での個人所得税の源泉徴収は予納(中国語で予繳)といい、暫定的な個人所得税額になります。
従って、翌年の総合所得確定申告時に、労務報酬所得や原稿執筆料所得や特許権使用料所得を総合所得に組み入れて、課税所得額を計算します。納付額に不足額がある場合は追納し、納め過ぎていた場合は還付の申請を行います。
※確定申告ではなく、総合所得確定申告と表示するのは、個人所得税の申告カテゴリが大きく4種(総合所得、分類所得、非居住者所得、株式譲渡所得)に分かれており、そのうち労務報酬所得や原稿執筆料所得や特許権使用料所得は総合所得に含まれるためです。
【労務報酬所得】
控除可能費用額:
スポット単位或いは月次単位の収入が4,000元以下・・・控除可能費用額は一律800 元
スポット単位或いは月次単位の収入が4,000元超・・・控除可能費用額は収入の20%
課税所得額の出し方:
収入から費用を控除した残額
適用税率と計算例:
下表(個人所得税源泉徴収率表二)を適用します。
計算例①:労務報酬3,000元、
個人所得税額=(3000-800)×20%=440元
計算例②:労務報酬10,000元、
個人所得税額=(10000-10000×20%)×20%=1600元
計算例③:労務報酬62,500元
個人所得税額=(62500-62500×20%)×30%-2000=13000元
個人所得税源泉徴収率表二↓↓↓
【原稿執筆料所得】
控除可能費用額:
スポット単位或いは月次単位の収入が4,000元以下・・・控除可能費用額は一律800 元
スポット単位或いは月次単位の収入が4,000元超・・・控除可能費用額は収入の20%
課税所得額の出し方:
収入から費用を控除した残額から更に70%を乗じて算出する。
適用税率と計算例:
原稿執筆料所得は20%の源泉徴収税率を適用します。
計算例①原稿料3,000.00元
課税所得額=(3,000.00-800.00)x70%= 1,540.00元
個人所得税額=1,540.00x20%= 308.00元
計算例②原稿料180,000.00元
課税所得額=180,000.00x(1-20%)x70%=100,800.00元
個人所得税額=100,800.00x20%=20,160.00元
【特許権使用料所得】
控除可能費用額:
スポット単位或いは月次単位の収入が4,000元以下・・・控除可能費用額は一律800 元
スポット単位或いは月次単位の収入が4,000元超・・・控除可能費用額は収入の20%
課税所得額の出し方:
収入から費用を控除した残額
適用税率と計算例:
特許権使用料所得は20%の源泉徴収税率を適用します。
計算例①:特許権使用料3,000元、
個人所得税額=(3000-800)×20%=440元
計算例②:特許権使用料180,000元、
個人所得税額=(180,000-180,000×20%)×20%=28,800元
【根拠となる規定】
「国家税務総局 『個人所得税の源泉徴収申告管理弁法(試行)』の公布に関する公告」 (国家税務総局公告【2018】61号)
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